
こんにちは、松井歯科医院院長の松井です。
歯の治療で、あの粘土のようなものを口の中に入れる「型取り」。あなたも、こんな経験はないですか?
・型取りの最中にえずいてしまって、涙が出た
・固まるまでの数分間が、とにかく息苦しくて長く感じた
・「動かないでくださいね」と言われても、我慢できずに手を上げてしまった
・そもそも型取りが怖くて、治療の途中で通うのをやめてしまった
実は、当院に来られる患者さんの中にも「他のことは平気なんですが、型取りだけはどうしても苦手で」とおっしゃる方が少なくありません。
そして、この「苦手」は、けっして気の持ちようや、我慢が足りないという話ではないんです。
今回は、なぜ歯の型取りが苦しく感じられるのかという理由と、その負担を減らすための工夫についてご紹介させて頂きます。同じことで悩んでこられた方の、少しでも参考になれば嬉しく思います。
なぜ、歯の型取りは苦しいのか

まず、型取りが苦しく感じられる理由を整理してみます。
歯科医院で行う従来の型取りは、「印象採得(いんしょうさいとく)」と呼ばれる処置です。トレーと呼ばれる器具に印象材(粘土のような材料)を盛って、お口の中に入れ、固まるまで数分間そのまま保持します。
この工程には、どうしても患者さんに負担がかかる要素がいくつかあります。
・印象材が固まるまで、口を開けたまま数分間待つ必要がある
・材料の量が多く、喉の奥のほうまで広がってくる感覚がある
・トレーが大きく、お口の中で異物感が強い
・材料そのものの味やにおいが、苦手だと感じる方が多い
・途中でやめられない
特に負担が大きいのが、最後の「途中でやめられない」という点かと思います。
苦しくなってきても、あと少し我慢しなければならない。この「逃げ場がない感じ」が、型取りへの苦手意識をより強くしてしまうのだと、私は感じています。
えずいてしまうのは、あなたのせいではありません

「自分は他の人より我慢が足りないのだろうか」「大人なのに情けない」
そんなふうにご自身を責めてしまう患者さんが、本当に多くいらっしゃいます。
でも、ここははっきりとお伝えしておきたいところです。
えずいてしまうのは、体を守るための、ごく自然な反応です。
これは「絞扼反射(こうやくはんしゃ)」と呼ばれる、人間に本来そなわっている防御反応です。舌の付け根や、上あごの奥、喉の周辺に何かが触れると、体が「異物が入ってきた」と判断して、それを外に出そうとする。そういう仕組みになっています。
つまり、この反射そのものは、すべての人に備わっているものなんですね。
ただ、この反射の出やすさには、かなりの個人差があります。反射が強く出る状態は「異常絞扼反射」と呼ばれ、その背景にはいくつかの要因があると言われています。
・お口の形や、あごの大きさなど、体の構造による要因
・全身の体調や、鼻づまりなど呼吸に関わる要因
・過去の歯科治療でつらい思いをした経験など、心理的な要因
どれか一つだけが原因というより、複数が重なっていることのほうが多いように思います。
心理的な要因が関係している場合、「前にえずいてしまった」という記憶が、次の治療でさらに反射を出やすくしてしまう、ということも起こります。だからこそ、「我慢しよう」と気合いで乗り切ろうとするほど、かえってつらくなってしまうことがあるんです。
まずは、遠慮なく伝えてください
もしあなたが型取りに苦手意識をお持ちなら、治療が始まる前に、必ず歯科医師や歯科衛生士にお伝えください。
「型取りが苦手です」
「前にえずいてしまったことがあります」
この一言があるだけで、こちら側の準備がまったく変わってきます。
私自身、これを事前に教えていただけると本当に助かります。逆に、何もおっしゃらずに我慢されて、途中で苦しい思いをさせてしまうほうが、お互いにとってつらい結果になってしまいます。
言いにくいことではないですし、けっして迷惑でもありません。むしろ、教えていただくことが一番の対策なんです。
従来の型取りでも、負担を減らす工夫はあります

まずは、これまでの方法のままでできる工夫をご紹介します。こうした工夫だけでも、負担がかなり軽くなる方がいらっしゃいます。
|鼻でゆっくり呼吸する
口で息をしようとすると、どうしても喉の奥に意識が集中してしまいます。鼻からゆっくり息を吸って、ゆっくり吐く。これを意識するだけでも違ってきます。
|少し前かがみの姿勢をとる
あお向けの姿勢だと、材料が喉のほうへ流れてくる感覚が強くなります。背もたれを起こして、少し前かがみの姿勢で行うと、楽になる方が多いです。
|事前に合図を決めておく
「苦しくなったら左手を上げてください」というように、合図を決めておきます。「いつでもやめられる」と分かっているだけで、気持ちがずいぶん楽になるものです。
|トレーのサイズを調整する
お口の大きさに合わないトレーを使うと、異物感が強くなります。小さめのものを選んだり、形を調整したりすることで、負担を減らせる場合があります。
|食後すぐの時間帯を避ける
満腹の状態だと、反射が出やすくなることがあります。ご予約の時間帯を工夫するのも、一つの方法です。
これらの工夫でどのくらい楽になるかは、患者さんによって差があります。すべての方に同じ効果があるとは言い切れませんが、試してみる価値はあるかと思います。
型取り材を使わない方法もあります

さて、ここからが今回の本題です。
近年の歯科医療では、印象材を使わずに、カメラでお口の中を撮影して型取りを行う方法が広まってきています。
これを「光学印象(こうがくいんしょう)」と言います。使用する機器は「口腔内スキャナー」と呼ばれるものです。
ペン型のカメラをお口の中に入れて、歯の表面に沿ってゆっくり動かしていくと、その場でモニターに歯の形が立体的に映し出されていきます。粘土のような材料は一切使いませんし、固まるのを待つ時間もありません。
なぜこの方法だと負担が軽くなるのか。理由は主に3つあります。
|お口の中で材料を固める工程がない
喉の奥まで材料が広がってくる感覚も、独特の味やにおいもありません。
|いつでも中断できる
苦しくなったら、その時点でカメラを外せばいい。そして、また続きから再開できます。「固まるまで我慢しなければ」という状況が生まれません。
|撮影しながら、その場で確認できる
モニターに映る映像を見ながら進めるので、撮り足りない部分があればその場で分かります。従来の型取りのように、「模型を作ってみたら不十分だったので、もう一度」ということが起こりにくくなります。
実際の研究でも、口腔内スキャナーによる型取りは従来の方法と比べて患者さんの不快感が少なかったという報告があります。ただ、これは口腔内スキャナー全般についての報告ですし、感じ方にも個人差があります。「絶対にえずかない」とお約束できるものではない、という点はご理解いただければと思います。
当院でも、この口腔内スキャナーを導入しております。ただし、すべての治療で使えるわけではありませんし、当日に被せ物が入るわけでもありません。詳しくは、こちらの記事でご説明しています。
▶ 口腔内スキャナーを導入しました|神戸駅徒歩5分の松井歯科医院
よくあるご質問
Q. えずきやすいことを伝えても、迷惑ではないですか?
まったく迷惑ではありません。むしろ、教えていただけると助かります。事前に分かっていれば、姿勢や進め方を工夫できますし、こちらの声のかけ方も変わってきます。
Q. 途中で気分が悪くなったら、止めてもらえますか?
もちろんです。光学印象の場合は、カメラを外せばその時点で中断できます。合図の方法を最初に決めておきますので、遠慮なく伝えてくださいね。
Q. 保険の治療でも、光学印象は使えますか?
光学印象は、一部の自由診療と、保険診療の中のCAD/CAM(キャドカム)という白い詰め物や被せ物には適応できます。ただし、すべての治療で使えるわけではありません。従来の方法で型取りを行う場合でも、姿勢や合図の工夫はできますので、苦手意識のある方は遠慮なくお申し出ください。
Q. 光学印象なら、絶対にえずきませんか?
「絶対に」とは、申し上げられません。感じ方には個人差がありますし、お口の状態によっても変わってきます。ただ、材料を固める工程がない分、負担が軽くなる方は多いと感じています。
Q. 相談だけでも大丈夫ですか?
はい、大丈夫です。「まず話を聞いてみたい」というご相談も歓迎しております。
それでも不安な方へ

ここまで読んでくださって、それでもまだ不安が残っている方もいらっしゃるかと思います。
型取りが苦手なことがきっかけで、何年も歯医者から足が遠のいてしまっている。そういう方も、実際にいらっしゃいます。
そんなときは、治療を受けるかどうかは決めずに、まずお話だけでも聞かせてください。
・どんなことが不安なのか
・過去にどんなつらい経験があったのか
・どこまでなら大丈夫そうか
こうしたことを最初に共有できるだけで、進め方はいくらでも工夫できます。無理に治療を進めることはいたしませんので、どうぞ安心してくださいね。
まとめ
今回は、歯の型取りが苦しい・えずいてしまうという方に向けて、その理由と対処法についてご紹介させて頂きました。
・えずいてしまうのは「絞扼反射」という自然な防御反応で、我慢が足りないわけではありません
・苦手であることを事前に伝えていただくのが、一番の対策です
・従来の型取りでも、呼吸法や姿勢、合図を決めるなどの工夫で負担を減らせる場合があります
・印象材を使わない「光学印象」という方法もあり、当院でも導入しております
・ただし、すべての治療に使えるわけではなく、感じ方にも個人差があります
型取りが苦手というだけで治療をあきらめてしまうのは、本当にもったいないことだと思います。
苦手なことは、遠慮なくお伝えください。それを聞かせていただくことが、私たちにとって一番ありがたいことですから。
当院はJR神戸駅から徒歩5分のところにあります。神戸市近郊で型取りに苦手意識をお持ちの方は、一度ご相談してみてくださいね。
自由診療に関するご案内
この記事でご紹介している口腔内スキャナーによる光学印象は、一部の自由診療において使用しております。自由診療は公的医療保険が適用されず、費用は全額自己負担となります。
|主なリスク・副作用について
・お口の状態によっては、光学印象での対応ができない場合があります
・撮影中に不快感を覚える場合があります(感じ方には個人差があります)
・被せ物は、噛み合わせや使用状況によって、破損や脱離が起こる場合があります
・治療後に、しみる・違和感があるなどの症状が出る場合があります
・治療の効果や経過には個人差があり、すべての方に同じ結果をお約束するものではありません
|費用について
治療内容やお口の状態によって異なりますので、診察のうえでお見積りをご提示いたします。費用についてのご説明を十分に行い、ご納得いただいてから治療を開始いたします。
ご相談・ご予約
お電話のほか、ページ上部の「WEB予約」からも24時間ご予約いただけます。
・電話番号:078-381-6484
・診療時間:9:00~13:00/14:30~19:00(土曜の午後は14:00~17:00)
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