松井歯科医院ブログ

2026.09.11更新

口腔内スキャナーで歯の形を3Dデータ化するイメージ

 

こんにちは、松井歯科医院院長の松井です。

 

ここ数年で、「口腔内スキャナー」という機器の名前を耳にする機会が増えてきたのではないかと思います。

 

お口の中をカメラで撮影して、歯の形を立体的なデータとして読み取る機器です。粘土のような材料を使わずに型取りができることから、導入する歯科医院が少しずつ増えてきました。

 

ただ、便利そうに見える機器ほど、良いところばかりが伝わってしまいがちです。

 

今回は、口腔内スキャナーがどういう仕組みで動いているのかというところから、できないこと・向いていない場面といったデメリットまで含めて、歯科医師の立場でご説明させて頂きます。

 

口腔内スキャナーとは?仕組みからご説明します

3Dデータ化された歯の模型

 

口腔内スキャナーは、ペン型のカメラをお口の中に入れて、歯の形を立体的に読み取る機器です。英語では Intraoral Scanner と言い、頭文字を取って「IOS」と呼ばれることもあります。

 

仕組みとしては、次のような流れになります。

 

1. カメラの先端から、歯の表面に光を当てます
2. 跳ね返ってきた光を、内蔵のカメラが読み取ります
3. 光の返り方から、歯の凹凸を点の集まりとして計算します
4. その点をつなぎ合わせて、立体的な3Dデータを組み立てます

 

これを、歯の表面をなぞるように動かしながら連続で行っていきます。すると、モニターの上に歯の形が少しずつ現れてくる、というわけですね。

 

この方法による型取りのことを「光学印象(こうがくいんしょう)」と言います。光を使って形を写し取る、という意味です。

 

従来の型取りは、トレーに印象材(粘土のような材料)を盛ってお口に入れ、固まるのを待って型を取る方法でした。こちらは「印象採得(いんしょうさいとく)」と呼ばれます。

 

つまり「材料で形を写し取る」のが従来の方法、「光で形を読み取る」のが口腔内スキャナーということになります。目的は同じで、記録の取り方が違う、とご理解いただければと思います。

 

光学印象と従来の型取りの違いは、こちらの記事で項目ごとに比べています。
光学印象とは?従来の型取りとの違いを比較して解説

 

読み取ったデータは、そのまま被せ物や詰め物を設計するためのデータとして使われます。石膏で模型を作る工程を挟まずに、技工所へデータで送ることができるんですね。

 

主な製品と種類について

歯科用機器のイメージ

 

口腔内スキャナーは一種類ではなく、いくつかのメーカーから製品が出ています。日本の歯科医院で使われているもののうち、名前を見かけることが多いのはこのあたりです。

 

・Primescan(プライムスキャン)/デンツプライシロナ社
・iTero(アイテロ)/アライン・テクノロジー社
・TRIOS(トリオス)/3Shape社
・Medit(メディット)/Medit社

 

読み取りの方式や、連携できるソフトウェア、対応している治療の範囲などがそれぞれ異なります。

 

ただ、どれが優れていてどれが劣っている、という性質のものではありません。医院がどんな治療に使いたいのか、どの技工所と連携しているのかによって、選ばれる機種が変わってくる、というのが実際のところです。

 

もうひとつ、混同されやすい点をお伝えしておきます。

 

口腔内スキャナーは「型取りをする機器」であって、被せ物を作る機器ではありません。

 

被せ物をその場で削り出すには、ミリングマシンという別の装置が必要になります。両方をそろえている医院もあれば、スキャナーだけを導入している医院もある。ここは医院によって構成が変わるところです。

 

口腔内スキャナーのメリット

口腔内スキャナーによる光学印象のイメージ

 

では、従来の型取りと比べて何が変わるのか。患者さんにとっての違いを中心に挙げていきます。

 

|印象材をお口の中で固める工程がありません

これが一番大きな違いかと思います。喉の奥まで材料が広がってくる感覚も、独特の味やにおいもありません。型取りが苦手だという方にとっては、負担がかなり変わってきます。

 

|途中で中断して、また再開できます

苦しくなったら、その時点でカメラを外していただけます。材料が固まるまで動けない、という状況が生まれません。「途中でやめられない」という逃げ場のなさが、型取りへの苦手意識をつくっている面はかなりあると感じています。

 

|その場で確認しながら進められます

モニターを見ながら撮影するので、読み取りが足りない部分があればその場で分かります。従来の方法では、模型を作ってみてから不十分だと判明して、もう一度お願いする、ということが起こり得ました。やり直しが減ることは期待できます。

 

|データとして残せます

読み取ったデータはコンピューター上に保存されます。石膏模型のように置き場所を取ることも、経年で変形することもありません。技工所とのやりとりや、後日の確認にも活用できます。

 

|技工所へデータで送れます

模型を作って配送する工程を挟まないため、設計に取りかかるまでの流れがスムーズになります。ただし、これは治療全体の期間が必ず短くなるという意味ではありません。製作そのものには相応の日数がかかります。

 

デメリットと限界も、正直にお伝えします

治療方法について相談するご夫婦

 

ここからが、この記事で一番お伝えしたいところです。

 

|導入している歯科医院が、まだ限られます

機器の価格が高いこともあり、すべての歯科医院にあるわけではありません。「口腔内スキャナーで型取りしてほしい」とお考えの場合は、事前にその医院で対応できるかをご確認いただくのが確実です。

 

|すべての治療に使えるわけではありません

光学印象は、カメラで「見える」範囲しか読み取れません。ですから、次のような場面では従来の方法のほうが適していることがあります。

 

・歯ぐきの中まで深く記録する必要があるとき
・出血や唾液が多く、歯の表面を乾燥させにくいとき
・お口を大きく開けることが難しいとき
・総入れ歯のように、歯ぐき全体の形を記録する必要があるとき

 

治療の内容や、使用する材料によっても変わってきます。「機器があるから、どんな治療でも光学印象でできる」ということではありません。

 

|保険適用には条件があります

光学印象そのものが、いつでも保険で使えるというわけではありません。保険診療の中では、CAD/CAM(キャドカム)という白い詰め物や被せ物など、適応が定められた範囲での使用となります。

 

それ以外は自由診療の中での使用になり、費用は全額自己負担です。ご希望の治療が保険の範囲に入るかどうかは、お口の状態を拝見しないと判断できません。この点は、あらかじめご了承ください。

 

|その日のうちに歯が入るとは限りません

先ほど触れたとおり、口腔内スキャナーは型取りの機器です。院内にミリングマシンを備えていない医院では、被せ物は技工所で製作します。その場合、型取りの日と装着の日で通院が必要になります。

 

「スキャナーがある医院なら当日に歯が入る」と思われている方が時々いらっしゃいますので、ここは分けてお考えいただければと思います。

 

|不快感がまったくないとは言い切れません

印象材を使わない分、負担が軽くなる方は多いです。ただ、カメラの先端がお口の中に入りますので、感じ方には個人差があります。「絶対にえずかない」とお約束できるものではありませんので、そこは正直にお伝えしておきますね。

 

精度については、どうなのか

歯の適合を細かく確認するイメージ

 

「従来の型取りと、どちらが精度が高いんですか」というご質問をよくいただきます。

 

正直に申し上げると、「どちらが上」と一言で言えるものではありません。

 

1歯から数歯程度の範囲であれば、光学印象は十分な精度が期待できるとされています。撮影しながら不足に気づけるため、やり直しが減ることも期待できます。

 

一方で、お口全体のように読み取る範囲が広くなるほど、わずかなずれが積み重なりやすくなるという指摘もあります。この領域は研究が続いているところで、機種や術式によっても結果が変わります。

 

それと、どちらの方法であっても、精度を左右するのは機器だけではありません。歯ぐきの状態を整えておくこと、唾液や出血をきちんと管理すること。こうした準備の部分が、実は結果に大きく関わってきます。

 

ですから、「症例に応じて、適した方法を選ぶ」というのが正確なところかと思います。

 

当院での導入状況

歯科医院での治療説明の様子

 

当院で使用しているのは、デンツプライシロナ社の「Primescan(プライムスキャン)」です。

 

構成としては、スキャナー単体での導入です。院内に削り出しの装置は置いておりません。ですので、被せ物は技工所で製作いたします。型取りの日と装着の日で、通院が必要になります。

 

使用している主な場面は、自費のジルコニアによる被せ物と、保険のCAD/CAMによる白い詰め物・被せ物です。

 

ただ、先ほどお伝えしたとおり、すべての治療で光学印象を使えるわけではありません。お口の状態を拝見したうえで、従来の方法のほうが適していると判断した場合は、そちらでご提案いたします。そこは正直にご説明させて頂きますので、ご安心ください。

 

当院の口腔内スキャナーについて、実際の流れや使える範囲をもう少し詳しくまとめた記事があります。
口腔内スキャナーを導入しました|神戸駅徒歩5分の松井歯科医院

 

よくあるご質問

 

|どの歯科医院にもありますか?

いいえ、すべての医院にあるわけではありません。機器の価格もあり、導入している医院はまだ限られます。ご希望の場合は、受診前にその医院へお問い合わせいただくのが確実かと思います。

 

|保険で使えますか?

保険診療の中では、CAD/CAM(キャドカム)という白い詰め物や被せ物など、適応が定められた範囲での使用となります。それ以外は自由診療となり、費用は全額自己負担です。詳しくは来院時にご説明させて頂きます。

 

|従来の型取りより精度は良いのですか?

範囲が限られた症例では、十分な精度が期待できるとされています。ただ、どちらが優れているというより、症例によって適した方法が異なる、というのが正確なところです。お口全体を読み取るような広い範囲では、従来の方法を選ぶこともあります。

 

|データはどのくらい保管されますか?

当院では、診療記録に準じた形で保管しております。保管の期間や、他院への提供が可能かどうかについては、医院ごとに扱いが異なります。気になる点がありましたら、遠慮なくお尋ねください。

 

|スキャナーで型取りすると、治療は早く終わりますか?

型取りそのものにかかる時間は短くなることが多いです。ただ、被せ物の製作には日数がかかりますので、治療全体の期間が大きく変わるわけではありません。この点は、あらかじめご了承いただければと思います。

 

まとめ

 

今回は、口腔内スキャナーの仕組みと、デメリットも含めた実際のところをご紹介させて頂きました。

 

・光を当てて歯の形を読み取り、3Dデータとして記録する機器です
・印象材を使わないため、型取りの負担が軽くなることが期待できます
・途中で中断でき、その場で確認しながら進められます
・導入している医院はまだ限られ、すべての治療に使えるわけでもありません
・保険で使えるのは、CAD/CAMなど適応が定められた範囲に限られます
・型取りの機器なので、その日のうちに歯が入るとは限りません

 

新しい機器というのは、どうしても良い面ばかりが先に伝わってしまいます。でも、できないことをきちんとお伝えしておくほうが、結果として患者さんの役に立つと思っているんです。

 

当院はJR神戸駅から徒歩5分のところにあります。型取りに苦手意識をお持ちの方、口腔内スキャナーでの治療をお考えの方は、一度ご相談してみてくださいね。

 

自由診療に関するご案内

 

このページでご紹介している口腔内スキャナーによる光学印象は、一部の自由診療において使用しております。自由診療は公的医療保険が適用されず、費用は全額自己負担となります。

 

|主なリスク・副作用について

・お口の状態によっては、光学印象での対応ができない場合があります
・撮影中に不快感を覚える場合があります(感じ方には個人差があります)
・被せ物は、噛み合わせや使用状況によって、破損や脱離が起こる場合があります
・治療後に、しみる・違和感があるなどの症状が出る場合があります
・治療の効果や経過には個人差があり、すべての方に同じ結果をお約束するものではありません

 

|費用について

治療内容やお口の状態によって異なりますので、診察のうえでお見積りをご提示いたします。費用についてのご説明を十分に行い、ご納得いただいてから治療を開始いたします。

 

ご相談・ご予約

 

お電話のほか、ページ上部の「WEB予約」からも24時間ご予約いただけます。

 

・電話番号:078-381-6484
・診療時間:9:00~13:00/14:30~19:00(土曜の午後は14:00~17:00)
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投稿者: 松井歯科医院